その夜、あたしは高熱を出した。
雨に濡れたのと、気持ちが緩んだからだろう。
今までまったく風邪なんてひかなかったのに。
こんなにも身体がだるいことなんてなかった。頭がズキズキする。呼吸が苦しい。意識がはっきりしない。
まるで、夢と現実の間にいるかのようだった。
「苦しそうだよ」
声が聞こえる。
誰だろう。
そもそもあたし、何やってるんだろう。ここはどこだろう。
「イク様がわざわざ力を使うことはないですよ」
ああ、そうだ。
あたしは結局あの人達のところに帰ったんだった。
レイ様に手を引かれて帰って、イク様があたしに抱きついてきて、チキはお風呂を用意してくれて、それから落ち込んでるカガにいっぱい謝って、イツカはうまい飯をいっぱい食べさせてくれた。
すごく居心地がよくて、安心した。
安心しちゃったからダメだったんだな。張っていた気が緩み、体調を崩した。
「でも、すごく苦しそうだよ。マヨ、すぐに治してあげるからね」
イク様は本当に優しいな。
「よしよし」
頭を撫でてくれるこの手は、きっとレイ様だろう。
温かくて、優しい手。
よく夢に見たあの手は、もしかしたらこの人だったのかもしれない。
そうだったらいいな。
もっと早くに出会いたかったけど。
優しい感触が心地よい。
今だけは甘えさせて欲しい。
今だけは。