-ダンプ-

「DUMP! -ダンプ-」は、創作小説サイト「萬花堂」の作品です。
since 2013/8/20

※この作品には流血をともなう暴力表現が含まれています。苦手な方は閲覧をお控えください。

第弐話:第弐区域
「終の棲家に辿り着いた野良犬の昔話」:其之拾壱


 

 扉をノックする。
 アジトとして使っている建物。ぼろいけど、結構大きい。
 明け方。
 普通の人間なら寝静まっている時間帯だが、あいつらは起きている。酒飲んだり、薬やったりして、この時間帯はまだ騒いでいる。
「あたしだ」
 声をかけると、扉が開いた。
「なんだ、お前か。珍しいな、こんな時間に」
 そいつは言いながら、あたしの持ってる抜き身の剣と拳銃に視線をやる。警戒している様子はない。裏切られるなんて思ってもないんだろう。
「ジェイはいるか?」
「ああ。中に居る。何か派手にやらかしてきたのか?」
「そうだな。これからやらかすつもりだ」
 言い終わると同時に、斬りつける。
 そいつは悲鳴もあげず、絶命した。
「おい、何だ。どうした?」
 男が倒れた物音が、奥にも聞こえたようだ。
 異変を感じ取り、中がざわつく。
 透視能力で、確認する。だだっ広い部屋に集まっている。ざっと数えて20人近くはいるだろう。ちょっと辛いな。
 まあいい。ジェイさえ殺せば、他は生かしておいても構わない。どうせ烏合の衆だ。
 あたしは返り血を浴びたまま、奥へと進む。
 独特の臭いが鼻を突く。葉っぱでもやってたんだろう。視線をやると、それらしきものがあちらこちらに散らばっている。
「おい」
 ジェイが何か言おうとしている。
 あたしは構わず銃口をジェイに向けた。
 乾いた音が響く。全部で6発。
 全て命中した。けれども、それはジェイには届かなかった。
 あいつは両脇にいた連中を自分の下に引き寄せ、盾にしやがった。
 死んだのはジェイではなく、ジェイの左右にいた2人。さっきまで談笑していた2人を、事も無げに身代わりにしやがった。
「何のまねだ?」
 余裕の笑みで、ジェイが問う。
「鶴の恩返し」
「あん?」
「そういう物語があるんだよ。助けてもらった人に、恩返しするんだ」
「ずいぶんな恩返しだな」
「お前にじゃねぇよ。誰がお前なんかに恩返しするか」
「酷いこと言うじゃねぇか。仲間だろ?」
「ああ、抜けるわ。お前らの仲間なんて、恥ずかしくて表出歩けねーよ」
「まあいいさ。好きにしろ。俺も好きにさせてもらう。ちょうど退屈してきたところなんだ」
 あたしは弾が空っぽの拳銃を投げ捨て、剣を構える。
「いいおもちゃが来てくれた。たっぷり楽しませてくれよ」
 下卑た笑みを浮かべる。
 こいつは本当にこういう表情がよく似合う。
 こんな奴と一緒にいた自分が恥ずかしい。いや、たぶん以前あたしもこういう表情をしていたんだろう。
 でも、今は違う。
 約束を果たすんだ。
 今までの自分とさよならだ。







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