「マヨの癖にすごく感動的なのが嫌でした」
「酷いなおい!」
あたしの昔話を一通り聞き終えたシキが開口一番にそれだ。しかも心底嫌そうな顔してるし。
「マヨの癖にって何だよ!癖にって!」
「だってマヨだし。マヨのことだからどうせすっごいくだらないんだと思ってたのに」
「初めに言っただろ?聞くも涙、語るも涙だって」
「本当にその通りだったのがすごく嫌でした」
ずず、と熱い紅茶をすする。
「おい、こら!」
「あー、もうほんとに思ってたのと真逆で、もう……ほんとどうしたらいいの……」
まるでこの世の全ての不幸を背負ったかのように、額を押さえるシキ。
「え?何?そんなにへこむようなこと?あたし泣いてもいい?」
シキは深い深いため息を零す。
ほんとに泣くぞこのやろー。
「それで、そのあとレイ様達の仲間入り?」
「そーだよ」
「何事も無く?」
「ん?何で?」
「だってギャングだったんでしょ?しかも相当あくどいことやってた。第四区域に収容されてもおかしくないでしょ」
「あー…うん、そうなんだよ」
ぽりぽりと頬をかく。
「でもレイ様が話をつけてくれて、あたしは無罪放免」
「何それ。てか、レイ様どんだけ影響力強いの」
「だって神様だし。領主様だし」
「いや、まあそうなんだけど」
「そこも聞いてくか?」
「そうだね。ついでに聞くよ。聞くけど、ちょっと出かけるよ」
「へ?どこに?」
「買い物」
それだけ言うと、シキは立ち上がる。そして財布、鍵、携帯電話と、最低限のものをポケットに詰め込む。
「行くよ。その話は道中で聞くよ。旅のお供に」
「あ、おう」
あたしは促されるままにシキについて行く。
旅のお供である昔語りと共に。